WAW! 2017-国際女性会議 2017 鎌倉フェローシップ 「男女共同参画」 シンポジウム |
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以下に「Webシンポジウム」として掲載する内容は、WAW!2017にさきがけ2017年8月27日(日)に沖縄県那覇において行われた一般財団法人鎌倉フェローシップ(沖縄ロースクール奨学金)の講演会を、WAW!2017シャインウィークス公式サイドイベントとして編集し、国際女性会議およびWAWシャインウィークスの期間中に公開するものです。 司会 鎌倉千秋 (ジャーナリスト) 登壇 當眞正姫(弁護士:とうま法律事務所,琉球大学法科大学院1期生) 川崎幸治(弁護士:天方・川崎法律事務所,琉球大学法科大学院2期生) (以下敬称略) 代表理事(鎌倉淳爾): 開会挨拶、KFF奨学金について、本講演会の意義をWAW!2017および国連が掲げるSDGsとの関係からアウトライン。 司会(以下鎌倉):當眞弁護士は沖縄市で開業されております。琉球大学法科大学院1期生で、鎌倉フェローシップ・沖縄ロースクール奨学金の初代奨学生でもあられます。在学中は子育てをしながら司法試験に挑戦し、現在は二児のお子さんを育てながら、とうま法律事務所を経営されています。沖縄で女性の社会進出を実現するロールモデルです。今回のご縁に与り、鎌倉フェローシップは、ここにおられる當眞正姫先生や川崎幸治先生は、沖縄の未来のため、地域に密着した男女共同参画や子供の貧困の解決に法曹としてのリーダーシップを発揮され、世界にも発信されていくご活躍をするであろうお二方に『沖縄の女性がもっと活躍できる社会に、そして、沖縄の子どもたちの未来の選択肢をもっと豊かに!』するためにはどうしたらよいのか、お話しを頂き、来場の皆様、琉球大学法科大学院の皆様とともに、沖縄の諸問題についてディスカッションをすすめたいと思います。それでは、當眞先生、川崎先生、よろしくお願い致します。 當眞:先ほど紹介していただきましたが、本日は琉球大学法科大学院出身で鎌倉フェローシップの奨学金を受けたご縁もありましてこれから沖縄で働く女性弁護士としてお話しをいたします。特に働く女性としてワークライフバランスを充実することの重要性について、私が日々感じていることなどを踏まえてお話しをさせていただければ、と思っております。 まず女性として子育てをしながら働くということなのですが、「ワークライフバランス」という言葉をみなさんも聞いたことがあると思うのですが、「仕事と生活の調和」という意味です。日本社会の現実的な構造ではどう思いますか?特に女性の仕事と生活は、両立しにくいのが現実ではないか、と思っております。個人的な感覚では、沖縄社会では、沖縄の女性はワークライフバランスを充実させることがさらに難しいのではないかと思っています。ワークライフバランスということで考えると、会社で女性が責任ある地位にある場合、女性だけではないかもしれませんが、子どもの病気などで仕事を休むのは難しくなります。男性であれば、子どもの病気があって、仕事を休めないということがあった場合、周りは別に仕事を休めないことに対してそれは「しょうがないのね」という風潮があると思います。それは会社だけではなく、派遣であっても。しかし、女性が子どもに病気があって仕事を休めないと言った場合、周りはどう思うと思いますか?「家庭よりも仕事が大切なのか?(語順を変更)」ということを言われてしまう、思われてしまう、といった現状があるかと思います。 鎌倉:あと、例えば、育児をしている母親が子ども急病などで早退をすると、周囲は(仕事の負担を)被るのではないかと、女性同士の間でも、いがみあいではないですけれども、ありますよね。 當眞:それを「わるいなぁ」と思ってしまう、もちろん本人もそうなんですけど、周りの人にも当然、なんというのですか、仕事をしなければいけない現実と、一方で帰らなければならない現実というのが、ワークライフバランス上、男性と女性と同じ率であっても、評価が違うという事実があるということをちょっといいたいなと思います。沖縄は特に全国でも最低賃金が低くて、女性も母親も働かないと暮らしていけないという現実があるんですけれども、となると、母親もいるからこそ生活が成り立っているにも関わらず、母親も労働(生活からいいかえ)しているから、収入という利益が受けられるにも関わらず、働いていて受ける不利益については母親だけに押し付けようとしている。例えば、「母親が面倒みるべきなんだから」と、お父さんもお母さんも仕事休みたくない、じゃあどっちが休むべきなんだとなった時に、「いやいや、母親なんだから、お母さんなんだから、休むのが当然でしょ?」というような価値観があるような気がします。それで、母親自身も仕事と家庭のはざまで結局自分自身を責めると。周りだけではなく母親自身も自分自身を責めてしまう現状があるというのは、母親自身もそんな「お母さんがやるべきなんだよなぁ」と思っているというが現実なのかな、と思っております。ひと昔前のように、女性が家で家庭を守って、働かずに、男性が社会で、外で仕事をするという時代だったら別にいいんですよ。それは役割分担でそうなっているというであれば。だけど今の時代は、収入も特に沖縄は低くて、女性も働かないと、家庭が成り立っていかないんです。にもかかわらず、家事や育児、家の仕事は女性におしつけるという価値観、考え、それをあたかも自然のように受け入れて、流してしまっている現状が、まだ沖縄にあるのかな、沖縄だけではない全国にあるのかもしれないのですけれども、というふうに思っています。社会の構造、家族・親族・社会の意識がどうなのか、自分自身を含め、どういう意識を持っているのか、というのを考えていくべきじゃないかなと思っています。 ワークライフバランスの課題として、私自身が考えていることが3点あります。まず経営者としての視点からの課題、女性弁護士、母としての課題、沖縄の地域の特性からの課題からノベマス。まず、経営者としての視点からの課題として、私は約5年前にそれまで勤めていた弁護士事務所から独立して自分自身で法律事務所を経営しています。弁護士は今1人で事務員が2人います。私は子どもが2人いて、出産育児を経験して、雇われる側も経験しているのですが、使用者側になって、従業員を雇う立場になった途端に、立場が替われば見方が変わる、考え方が変わるとまでは言わないですけれども、それを実感させられるようなことがありました。小さな事務所なのですが、従業員の妊娠がわかりまして、これから出産育児と長期休暇をすることになりました。従業員の妊娠出産、長期休暇ということはとても素晴らしいことではあるじゃないですか、けれども、仕事の面からはその方が居なってしまうということは、他の人を探さなくてはいけない、他の人がこのひとのように働いてくれるかわからない、という負担があるのは確かなのです。痛手があるのも確かなんです。だから私は従業員から報告を受けた時に、うれしい反面ちょっと複雑な気持ちになってしまったということも事実ではあるんです。ちょっとこの複雑な気持ちになってしまったということが、とてもショックで、ちょっと情けないなと思ってしまいました。負担をちょっとマイナスにとらえてしまっている感じだと思います。私は弁護士としては、もうそろそろ9年、10年になりますので、同じ事実を自分の都合の良いように解釈する人を沢山見てはきていますので、立場が変われば、評価や考え、解釈が変わるというのはわかっているはずだったのですけれど、やはり自分のことと考えると、変わってくるのかなと、出産育児をマイナスにとらえてしまっていたという自分がいました。けれども、やはり、それは間違いだと思います。負担は当たり前で、それはマイナスだと考えてはいけないと思っています。これからの時代は、女性とか男性だけでなく、LGBTの方の人権なども最近重視されていますけれども、国籍とかも関係なくなって、その人の個性が重視されるべき時代になってくると思いますので、男性であっても女性であっても必ず人と人とのかかわりがある以上、負担が生じるのは当たり前なので、そういうことで決めつけるのはいけないのではないか、と思っています。結局、経営者としてできることを私は考えたのは、働き方改革というのは、こんな小っちゃな事務所だけれどもやはり私からやっていかなきゃいけないんじゃないかということです。普通は、沖縄の弁護士事務所、朝9時から夕方6時までですけれど、私の事務所は5時15分までの勤務にして、早く帰れるようにしたりして、勤務時間を8時間勤務を7時間15分とか7時間半にして、そういう小さなことなのですが、従業員の人にとっては大きなこと、そういうことから始めていくことが必要じゃないかなと思っています。 次に女性弁護士としての課題ですけど、弁護士だからという訳ではないですが、代わりがいないということがあります。となると家庭や自分を犠牲にしがちになります。何かを犠牲にしないと成り立たないというのが現実だと思っています。よく女性弁護士の間で、「どうして他の少年ばかり気にして自分の子どものことを気にしてくれないの?」と自分の子どもから言われたということがあるのですけれども、私もそのようなことがとても重くのしかかってきています。バランスをいかにとるかというのがワークライフバランスなそうなのですけど、責任ある仕事と家庭をどう調和するかというのが自分の中で一番重要な課題かなと思っています。 沖縄という地域の特性からの課題ですが、よく言えば分担意識が強く、悪いえば、男尊女卑の傾向が強いと思います。来週旧盆がありますけれども、男性はずっと座って酒を飲んでいて、一夫で女性は台所でおしゃべりしながら料理を作って料理を運んで、ずっとそんなことが行われています。 鎌倉:今も、ですか?普通そうなんですか?男性が飲んでいて女性が台所に立つ。 當眞:今も、です。普通と思っています。小さい頃からそうですから、そうなんですよ。長男が優遇されていることもあったりする。仏壇を継ぐから。沖縄の女性は私に言わせると我慢することに慣れている。その我慢が自然だと思っています。例えば、XX、DVの問題、暴力をふるうひとの問題、経済的に虐待する人、で、離婚相談に来る人とか、この方たちは我慢することに慣れて今に至っているような気がします。もちろん男性に原因があるのですけれども、弁護士事務所に来れるような人はまだいいとして、その原因の一つは沖縄の女性で自立している人が少ないということがあると思います。女性が自立して、経済的に余裕ができて、心に余裕ができれば、少しは考え方が変わり、結果として家庭やモラハラをするような相手も助けることができるのではないかと思います。経済的に自立してほしいというのは、お金という意味ではなく、心に余裕が持てるようになってほしいというところからです。よく「男性は敷居を跨げば外に7人の敵がいる」と言われますが、私は女性の場合はそれが10人いるんじゃないかなと実は思います。7人の敵の他に、3人は、「夫」、「親族」、「自分自身」です。親族は「早く帰ってきて早く子どもの世話しなさい」とか言いますよね。私の主人は手伝ってくれる方なんですけれども、夫もです。最後は自分で、「自分が我慢すればどうにかなる」とかどっちもやりたいけどどっちかは妥協して自分を追い込んでしまうという、我慢することに慣れている女性、我慢させることを疑問視しない男性ということでもあります。心に余裕がないということが問題です。 (沖縄という地域で法曹になるということは)沖縄は弁護士が少ないので、とても個性が重視される仕事だと思います。地域に密着した仕事だということを本日、受験生のみなさまにはお伝えしておきたいと思います。最後に、結局色々なことに通じますが、意志のあるところに道は開けるということで、有言実行、継続は力なり、勉強もそういうつもりで頑張って下さい。みなさんのご活躍を楽しみにしております。以上です。 鎌倉:次にご登壇頂くのは、同じく琉球大学法科大学院出身で、現在那覇市の「天方・川崎法律事務所」で弁護士として活躍していらっしゃる川崎先生です。 川崎:私は小学校の時に、親の仕事の関係で沖縄に来て、浦添で育ちました。琉球大学ロースクールの2期生で弁護士としては7年目です。何で弁護士をめざしたのかというところから話します。 私の親は「ナイチャー」だったので、小学校の時に少し違和感があり、仲間外れにされたということはないのですが、自分の存在意義を見つけたいというおもいがありました。そんな時に、色々な人に頼りにされたり、勉強を教えてと言われたのが嬉しくて、それがきっかけになりました。あとは、高校生の時につきあっていた彼女に「弁護士ってかっこいいね」といわれたので(笑)。仕事の関係では、那覇に事務所があり、美浜(北谷)にも支店があります。弁護士は4名、事務員さんが6名という体制でやっております。刑事事件、民事事件を扱っていますが、お金の貸し借りとか、建築代金を払いなさいとか、離婚問題、少年事件とかもやっています。少し例をあげると、今取沙汰されている前副知事が、口利きをしたかしていないかという問題の関係があります。終わったものでいうと、化粧品会社が出した化粧品による被害の事件や、普天間のこれは基地問題でもあるかと思いますが、その騒音被害で損害賠償を求めるという裁判があります。実は、この裁判をやっているのは二つのグループがありまして、簡単に言うと一つは、損害賠償よりも差し止めをグループ、もう一つが損害賠償だけを求めているグループがあります。私は損害賠償だけを求めているグループの弁護士に入っているのですけども、それに関して一時いろいろと報道されたことがあって、「差し止めを求めないで損害賠償だけ求めるとはどういうことだ」「基地はあってもいいが、お金が欲しいというわけなのか」ということで、議論になったこともあります。 (受験生の皆さんにお伝えしたいことというのは)弁護士の仕事で一番大事なのは、相手に理解してもらったり納得してもらったりするということです。これは最も大事なことで、これに尽きるのではないかと思います。いわば、プレゼンテーションです。例えば、裁判では結局裁判官が判決を書くわけですから、裁判官に対してこの人勝たせてあげようと思うようなプレゼンをするわけです、交渉するときには相手に対してこちらの言う通りだなと納得、理解してもらうことが大切だということを常に理解してやっております。そしてどういう順番で考えるのかというと、まずゴールを決めます。事件において何を目指しているのかということです。例えば殴られて怪我をしましたという時に、損害賠償を求めるところに一番重きをとるのか、あるいは刑事罰を受けてもらうというところか。あるいはそういうことを辞めてもらいたいというところか。どういうゴールをめざすかによって、何をするかというところが変わってきます。次にそれにあたって自分が伝えたいことはどういうことかを決めます。例えば金銭貸借の問題では、当然「お金を返してほしい」というところが伝えたいところなのですが、それにあたって「今自分はどれだけお金がなくて困っている」とか、「お金を返してくれない人がいかにひどい人なのか」、など自分が伝えたいことはどういうことなのかを意識します。この時に気を付けて同時に考えなければいけないのが「相手が知りたいことはどういうことか」ということです。一番重要になるのは自分が伝えたいことと相手が知りたい事や求めていることが結構ちがったりするということです。裁判官は「いつお金を貸して、誰に貸して、いつ渡し、いつ返すという約束をしたのか」などが要件事実として知りたいというのがありますよね。ただ、依頼者の立場になると、自分が如何に困っているのかや如何に借りた人がいろいろな人から借金をするなど酷い人なのかということが実際に言いたかったりします。しかし、裁判ということで対裁判官で言えば、そこは裁判官があまり知りたいところではありません。私たちは弁護士で法曹なので、当然依頼者の気持ちを重んじなくてはいけないですが、裁判官の知りたい事はこうだから、ということで重点をしぼって伝えないといけない。そうして伝えるべきことは何か、伝えないでいいことは何かということで取捨選択もあり、伝わりやすい文書を書いていくわけです。例えば、なるべく小見出しやタイトルを付けるとか、強調したいところを太字にしたり、線を引いてみたりします。以上の話を司法試験ということで考えると、答案を書く時に、自分が書きたいことを脇に一旦おいて、相手が知りたいことは何かということをまず考えることで、これが出題趣旨ということになります。書きたいことが出題趣旨と合致すれば良いのですが、自分が書きたいことと出題趣旨はちがうことが多く、例えば難しい問題で自分が知っていることを書きたいということがあると思いますが、そういう場合は失敗することが多いです。自分の不利な事実に目を向けないということは弁護士でもだめなことです。答案構成も同じです。日頃から相手の求めていることがわかるような知識を増やしつつ、教科書に書かれていること新聞に書かれていることを、疑いないがら読んでみる問題意識を持つことも大事です。そして考える癖をつけて、司法試験で答案を書いて伝えるという力を、日頃からロースクールで仲間たち、先生方に色々話してみるなどで訓練してほしいと思います。次のディスカッションで具体的にそういう意識を持ってほしいです。私からは以上です。 鎌倉:一番最初に示したいただいたところですが、もし端的に言っていただくとしたらどんなところか? 川崎:私が思うのは、少年事件を起こすお子さんというのは、非行に走っているという言い方だと思いますが、実際感覚としても、どうしてもひとり親世帯の家の子が多いという印象。私が少年事件を起こした子にあって、話をして、当然事件のことを反省するよう促して、今後どうしていくのか、そういう話もするわけですが、そこでいつも気になるのが、では将来この子どうしたいの?ということです。将来どういう夢があるのと聞いたりするが、ほとんどやはり、どうしても土木関係の仕事、解体屋いわゆるブルーカラーと言われる職業になりたいと答えることが多い。それがすごく気になっていて、自分でいろいろ考えた結果、見てきた中でその職業がいいんだと決めたのであればいいと思うが、おそらくそうではなく自分が見てきたのがそれしかない。それ以外の選択肢を狭めてしまっている、これしかできないという言う風に、知らず知らずのうちに思ってしまっていて限られた選択肢の中から選んでしまっているのではないか。金銭的な貧困の連鎖とは別に、気持ちの部分というか考え方の部分、本人は意識していないと思うが、自分はこれをやりたいと本当に思っていると思うが、そういうやりとりがすごく気になっている。 鎌倉:身近な大人が将来の直接的な将来像になると、悪い訳ではないが、選択しが知らないうちに狭められている。確かに環境は大きい、當眞さんはこのことはどう感じる? 當眞:確かに、二極化ではないが、塾に行けない子や、一方はゲームとか、スマホとか持っているが、全然…?ごはん食べるのも困難という家の子がいる。選択肢は私も思っていて、現状の子供たちが自分が医者や弁護士になりたい、と選択肢を思い描くことさえもできない。本当は大学行きたくても、働くと親に遠慮して言ってしまう子が現実に目の前にいることがつらい。 鎌倉:今日二人のお話聞いて、川崎さんは少年事件にかかわれるのは一定期間。當眞さんは事件で弁護士としてかかわった後、どうなっていくか思い悩んでいる。どういうこと? 川崎:少年事件は、犯罪を犯したから少年の場合は拘留されるのは大人も同じ。違うのは、大人はその後起訴されて裁判かけられるが少年は裁判なくして、少年審判に行く。最終的に処分決まる。拘留終わったあとは鑑別所という。観護措置が取られる。逮捕されて鑑別所いって少年審判で最終審判決まる。決まるのはだいたい2か月くらい。その中で、少年でも十何年間の人生経験がある中で、そこに私が二か月間くらいポンと入ってきて何か言っても、それで劇的に何か変わるかといったらそれはなかなか難しい。自分としてはいろいろ言ったりやったりするが、それが難しいと感じる。それから実際問題、少年はすぐ反省する。「二度とやりません。本当に反省しています。もう帰りたいです」と本当に言うのだが、それでも少年院から出てくるとまた同じ犯罪を繰り返してしまう。そういう場合が本当に多い。そういう時に自分たちの力の無さ、限界を感じる。 鎌倉:當眞さんは? 當眞:結局弁護士は受けている事件の範囲内しか対応することができないので、それ我執わると形式的には終わってしまう。そのことをどう対応していくかは難しい問題。一人一人。もどかしい。川崎さんと同じ。 川崎:でも、たまに感謝の手紙とか届くんですよ。僕はないですけど(会場笑い)
鎌倉:弁護士はいろいろな形で少年に会ってやっているが、一方でアフターケアを弁護士だけでなく社会なのか、もう一度犯罪に戻ってこないように、環境をよくするものは、大きな社会での取りくみが必要なのか? 川崎:私はどちらかというと親かな。少年事件起こす子は親に問題がある場合が多いと感じる。二パターンあると思う。過保護か放ったらかしているか、どちらかの場合が多い。すごい甘やかしているか。例えば、実際にみる時間がないから、言えないというか、親子の信頼関係が十分できていなくて、許すことしかできない、反発するんじゃないかと怖いので、だから買い与えたり、悪いことしても大丈夫だ大丈夫とやっている親とか。その反対で、悪い事しても何も対応しないし、夜中歩いていても注意もしない。社会全体ももちろんそうですが、親御さんの意識改革は大事だと思う。事件が終わると我々は離れてしまうが、やはり親御さんにこういう風にしてくださいと、少年もそうですが同じくらい親に話すことが大事なのかなと。 鎌倉:今キーワードとして、親、家庭という部分が出てきて、是非次話を進めていきたいが、これは(スライド指して)沖縄の方はご存知と思いますが、日本では子供の貧困率が非常に高く、これ少し改善され前は6人に1人だったのが、今回7人に1人。それでもOECD36か国の平均よりも悪い状態。こんなに豊かな日本において、子供の貧困率がこれほど悪いというのは、見えない所で子供の貧困が進んでいる。更に沖縄の子供の貧困率が全国の二倍だという、これは沖縄としては衝撃的な状況ではないか。子どもの3人一人は貧困である。ちなみに122万円というのが貧困ラインとされるが。 さきほど親の意識、という話がでてきたが、それでかかわってくるのが、ひとり親の世帯あるいは親の収入状況、経済状況というのは、親の心のゆとりだとかいろいろなところにかかわってくる。キーワードとしてお二人とも上げていたのが「離婚」。では當眞さんから。 當眞:やはり離婚相談うけることがとても多い。離婚相談、離婚の原因が借金。やはり経済面を理由とする離婚の相談に来るかたが多い。モラハラ、暴力もあるが借金やギャンブル、金銭的なからみで相談にくる方が多いと感じる。生活費を渡さない男性も多く、女性自身が働いている場合も多いが、沖縄は収入が平均して低いので、お母さんもお父さんも一杯いっぱいなのかなと。余裕がない方が多く、その結果子供にまで、配慮がいきわたらない状況にあるのかなと。 離婚してきちんと養育費を受け取れているシングルマザーはそれほどいない。2,3割で、払っているから偉いでしょという男性がいて、「いや払うのは普通だから(苦笑)子供が生活していけないから」と。でも「払って偉いでしょ」ということを普通に言う方がいる。辛いなと思う。 鎌倉:ちなみに、こちら(スライド)社会学者の水無田気流さんの「シングルマザーの貧困」と言う本からデータを取っているものだが。養育費を受けたことのない母子世帯、6割。今お話しでは3割という話ありましたが、この本によると、実質、養育費を支払っているのは2割なんだと。それくらいひとり親世帯とくに母子世帯になると養育費さえも手にすることなく生活している状況。事前のアンケートで當眞さんから教えていただいたが、ちなみに養育費の月額の平均は、全国で、(子供)一人の場合は35000円、二人の場合は50300円くらい、3人の場合は、55000円くらいということだが當眞さんの感覚的に沖縄はどうかというと…。実質どうなんでしょうか? 當眞:男性が非正規雇用だとすると年収200万円以下と言う方が普通にいらっしゃる。女性は(月)10万円行くか行かないかくらいの収入。お子さん二人か三人いるとして、3万いかない、2万円台で生活している方が普通にいる。そうなるとお母さんは月10万円の収入で養育費もらったとしても2万円しかもらえない。12万円で家族3人が今後生活していかないといけない。そういう現実が今後待っているという話をすると、離婚じゃあしないほうがいいのか、ちょっと考えさせてくださいという人もいる。 鎌倉:支払ってほしいけれど、そもそも沖縄の状況として非正規雇用の割合が全国でも高い。夫も収入がそれほど高くない、実質払ってもらえないし、払ってもらっても額は多くない。養育費問題だけを解決しようにも根本の経済状況、沖縄の雇用環境も含めて考えていかなければいけない。 ここでもう少し當眞さんがアンケートで言われていたこと、養育費の支払いを確実にすることが必要ではないかということ。働く女性弁護士としてのある種の提言だと思いますが。 當眞:沖縄で外国人と結婚して、外国人から養育費を貰っている方から相談を受けると、外国では養育費を払わなかったら罰則があるのでちゃんと払ってくれると。刑務所に入れられるかもしれないから、結局最終的にはきちんと払ってくれるんですよ。また額も高い。だから日本も、養育費払わない男性にどんどん罰を与えて、アメリカでは免許を取れないとか、車を持てないとか。税金のように引くとかいろいろ強い罰則をどうにか、当然のように子供は生きていかないといけないので、作って欲しい。 鎌倉:現状の動きは? 當眞:日弁連では、養育費の額をあげる運動をしていて、もう少し高いところに、広めようとしているが、実際裁判所にそれが利用されることは全くなくて(少し語尾不明)、法律でも執行手続きで養育費がとれるように、とりやすくなるように何年後かにかわるようですが、日本ではまだまだあまい状況なので、日本もぜひ強い制度を作っていただきたい。 鎌倉:ある意味沖縄から声を上げて、重要なのかなとも思います。雇用状況、女性の立場からも。そして駆け足でいくと、「相続」というキーワードお二方とも上げていて、全く違う角度から見ていたので面白い。當眞さん先に、沖縄ならではというと? 當眞:沖縄の相続の相談を受けると、男性のお子さんだけ先に土地をもらっている場合が多い。女性のお子さんがもらっていることはあまり、ほぼなくて、それが自然のようにみんな受け入れている現状。相続において男尊女卑の考えが沖縄では反映されている。 鎌倉:素人だが、相続は法定相続ありますよね?妻が二分の一、子供はその残りを分けていく。それがあっても沖縄の場合は男性の子供に多めにいくんですか? 當眞:なぜか土地を先に分けているんですね。お金を渡しているのとか多いです。時には法定相続で調整できることもあるが。そことの兼ね合いもあるのですが(?) 鎌倉:女性側はそれが当たり前そんなもんだという思いがある? 當眞:まず男性がもらいすぎることに違和感を覚えない女性が多い。最終的に相続の時に声を挙げる人は多くなってきているが、生前というか。 鎌倉:川崎さんは沖縄ならではの相続というと? 川崎:確かに當眞さんの言うように、男性は生前贈与受けているケース多いなと感じるが、沖縄ならではというと、やはり軍用地の相続の問題。みなさん軍用地というと、騒音問題だとか、思い浮かべると思うが、私たちが普段業務している中で多いのは相続の時にもめることが多く、軍用地料が入るわけだが、それでみんな喧嘩になるのが多い。その姿をみていると軍用地というのはない方がいいなと思う。それでまずいケースは、軍用地料が親の世代の時にたまたまかもしれないが、軍用地をたくさん持っていて軍用地料もたくさん入ってくる、本当に仕事をしていない方もいたりする。そういうのを見ると、軍用地というものが騒音とかだけでなく、精神的な部分でも、侵害されているということを感じることが。 鎌倉:基地問題が、新聞でみる形だけでなく沖縄の人たちの大事な、相続だとか、つなぎ目という部分でも影を落としている面があるのですね。 (終わり) |
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